〜ローボニマファパロ上巻?〜


薄く靄が掛かる街、時たま雲の隙間から、
月が除き、靄のカーテンを白く光らせる
。辺りは静まり、小動物の寝息すら聞こえてきそうだ。
だが、遠くから、この静寂をやぶるように、
濡れた路面を走る音がする。

1つは低く
1つは高い

歩幅が合わないのか、高い靴音の打ちならす回数が多い。
すると、突然音は止み、低い靴音の主が、

「ここで待ってろ!」

そこは物置小屋のようで、辺りは暗く、
知っている者にしか見つからないような場所

「イヤだ!アタシも一緒に!」

高い靴の音の主が、声を張り上げ、
目を潤ませながら願うが、また別の足音が聞こえてくる。
今度は2つではない。
1つ 2つ 3つ・・・
反響して正確な数はわからないが、
この二人よりは人数が多いのは明確だ。
その事にはお互い気づいているはずだが
、低い靴の音の主は、

「必ず戻る・・・だから待っていてくれ・・・」

・・・・・・

低い靴音の主が、何かを告げたが、
同時に複数の声と闇を震わす音が鳴り響き、
その言葉はかき消されてしまった。

静寂を無視した音が鳴り響く夜、月明かりが雲に閉ざされる。

 

 

 

華やかとは言えない街だがそれなりの賑わいを見せており、
街中を行きかう人々の群れは絶えない。
勤めに出る者 商売をする者 家事をする者
勉学に励む者 神に祈りを捧げる者
皆日のあたる時間に生きがいを感じ、
次の朝日を見たいために、懸命に生きているが、
そんな中に、正反対に生きる者が達が存在する。
その証拠に、賑やかな街中とは正反対の静かな路地裏で、
鈍い音が絶えず聞こえてくるではないか。
薄暗い路地裏に男が三人立っており、
その内の一人が拳を振り続け、
すでに立ち上がる気力のない男は必死に抵抗を続けるが、
その顔は醜く変形しおり、
僅かな希望を見ている目の光も鈍くなっている。
その惨状を残りの二人はただ傍観しているだけ。

「す・・・すまねぇ・・・勘弁してくれ。」

殴られた男が哀願するが、まるで聞こえていないように、
拳が振り下ろされ続ける。

「ねぇ室長・・・そいつもう駄目だよ。」

そう言われようやく"室長"と呼ばれた男は、
とうに事切れた男を手から離し、視線を二人の方へ向けた。

「次はどいつだ?キャス」

血で染まった拳を拭いながら、
彼は次の標的の顔を思い出そう
としていた。

「もう今日は止めときなよ、"会議"に間に合わなくなるよ。
 一緒に怒られるのは嫌だからね、ねぇペン?」
 
キャスと呼ばれた男は、この三人の中では一番背丈が小さく、
長く肩口まで伸ばした金髪と碧眼がよく似合っている。

「・・・時間だ。」

その隣で、キャスよりも頭1つ大きい男が今ペンと呼ばれた男。
長身で、モデルと間違えるほどだが、
彼が言葉を発することは少ない。
今日もようやく一言目を発したのだから。

「ちっ・・・仕方ない残りは明日だ。」

自ら時間を確認し"室長"はしぶしぶ、
会議へ間に合うように行動することを決めた。
暗い路地裏から、日の当たる街路へと抜けるこの瞬間が、
彼にとっては一番の苦痛だった。
雑踏に紛れる三人、行きかう人々は、
彼らが自分達とは違う人種とは思いもしないだろう。

人の欲を喰いあさり、屍の上を歩く彼らの事を・・・

ようやく人が空いてきた路地を歩くが、
先程の暗い通りとは違い、周囲の建物は高級感で溢れている。
この街でも成功した者しか踏み入る事のできない場所だからだ。
一件のホテルに彼らは入り、ボーイの案内に従い、
ペンとキャスはロビーに残り、"室長"一人だけエレベーターに乗ると、

自動的にゆっくりと上昇していく。
表示された数字が次々と点滅していき、
最後の1つの明りが消えてもまだ上昇を止めようとせず、
さらに数秒後にゆっくりと止まり、
目の前の扉が開く。
その先はとても長い廊下になっており
、壁面には見事な壁画が、描かれ、
この所有者の成功を誇示している。
廊下の端には、重厚な両開きの扉があり
、双方に紋章が刻まれている。
その扉を"室長"がゆっくりと開く。

「遅かった、まぁいい、座れ。」

広い部屋の中に、大きな円卓が置かれ、
正面に座る男は"室長"が席に着く事を促す。

「イエス 頭目(ファーザー)」

頭目と呼ばれた男は、葉巻を曇らせながら、
今週の"成績"を各"室長"達から聞き出し、
これから何をなすべきかを伝え、"会議"はお開きなる
。これがいつもの"会議"だが、今日だけは違ったようで、
"室長"一人だけ居残るように命じられていた。

「こっちだ、来なさい。」

頭目に促され、"室長"は数歩下がって後ろを歩く。
部屋の片隅にある、壁面を頭目は触れ、
何か手探りをしたいると
思いきや、目の前の壁の一部が、
扉のように、奥に開く。
その"扉"の中に入り、頭目の後を付いていく、
壁にはうっすらとゆらめくランプがともされているだけで、
自分が真っすぐ進んでいるのかすら、
わからなくなるようだ。

「お前に頼みがある。」

頭目の低い声が、壁に反響し、しっかりと聞こえてきた。

「単刀直入に言おう、ユースタス組に娘を嫁に出す。」

突然の話で"室長"はどう応対してよいのか分からず、
言葉を詰まらせていると、頭目もそれを察したのか、
自らの意思を伝える。

「俺ももう若くはない、ユースタス組のキッドなら、
 後継ぎとしても、申し分ないからな。」
 
確かに組を取り巻く現状は良好とは言えない、
だが、何故アイツの組に・・・
"室長"は頭目に悟られないように拳を握る。

「お嬢様はなんと?」

この言葉を一番聞きたくなかったのか、
ハァっと葉巻の煙を一気に噴き出し、

「・・・言ったら暴れ出してな、
 あいつの気性は母親譲りだ。まぁ美貌も母親譲りだがな。」

薄暗い廊下の中、頭目が"室長"の方を振り向き、

「だからお前に、娘をなだめて欲しい。
 お前とは子供の時からの、付き合いだからな。
  それに、婚礼までは襲撃が増えるだろうから、
  その身辺警護も任せる。」

そう言いながら、頭目は右手を差し出す。
これを受けるのは"鉄の掟"に従う事、
何があっても、破られない掟。

「俺の中でもお前は信用している。頼んだぞ ロー」

闇を握っていた拳を開き、差し出された右手を握り返す。

「イエス ファーザー」

満足そうな笑みを頭目は見せ、進む方向へ振りかえり、
靴音高く歩き始めるが、それとは対照的に、ローの足音は低い。
どれだけ進んだか分からないが、
薄暗い道の終わりが見えてきた。
扉と分かる取っ手が付いており、
それを頭目に言われ、ゆっくりと開けると、
見慣れたホテルの廊下にでた。
そして、またしばらく進むと、
一直線先に見慣れた扉が見て取れ、
ローの中には安堵感と焦燥感が入り混じり始めた。
頼んだぞ、っと頭目に言われ、
ローは一人その扉の前に立ち、
力を込めて扉に付けられたノックを鳴らす。

「どうぞ。」

了承の声を聞き、ローは扉を開けると、
その部屋の内部も先程の部屋に引けを取らない程の豪華さで、
家具の一式も見事なものだ。
そのうちの1つである、天蓋付きのベットの上でに横たわる女性が、

けだるくベットから身体を起きあげ、
こちらを睨んでいる。
その姿は中国風のドレスにまとわれ、
傍らには、幼少の頃から大事にしている、
白い熊のぬいぐるみが置かれていた。

「遅かったな?父と何を話していた?」

彼女の機嫌を損ねないように、ローはなるべく、
声を抑揚を抑え、伝える事に努めた。

「お嬢様が、ユースタス組の所へ嫁がれるという事で、
 その身辺警護を頼まれました。」
 
彼女がローを見る目は一層厳しいものになっている。

「それだけか?」

再び問われるがローの答えは変わらない。

「それだけです。」

たったこれだけのやりとりだが、
彼女の怒りが頂点に達するには十分な程で、
彼女は吐き捨てるように言う。

「嘘つきめ。」

苛立ち隠しきれず、彼女はようやくベットから降り、
ローの方へ真っすぐに歩き、彼の目の前で立ち止まり、
自分より背の高い顔を見上げ、
今度ははっきりと聞きたい事を伝える。

「お前は何も言わなかったのか?父に対して・・・何も・・・」

何度聞かれようと彼は答えを変える事はできない、
"鉄の掟"を受けてしまったのだから・・・

「私の仕事は、与えられた命令をこなすだけです。」

その一言が、彼女を押さえていた理性を吹き飛ばしてしまい、
あらん限りの大声で、今までの鬱憤を吐き出す。

「なら、いますぐ死んでこい!
 お前の顔なんか見たくもない!
  さっさと消えろ!クソオヤジのクソ犬め!」

部屋の空気が振動する程の大声で罵倒し、
ローの身体を力一杯に叩き、蹴るが、
それでもローは黙ったままでいる。

   言えるわけねぇ

声を上げ、殴り続ける事に疲れた彼女は、
荒げた息を整え、ローの身体にもたれかかり、
最後の質問を投げかけた。

「ロー!本当に・・・何も言わないのかよ!」

瞳に涙を浮かべ、彼の名を叫び、自ら聞きたい言葉を願う。
しかし、その願いを拒むように、ローはそっと彼女を自らの身体から引き離し、

出入り口の扉へ向かった。
その後ろ姿を視線から離さずに、見続ける彼女、
だが彼は振りかえらずに扉を開け、最後に一言だけ告げた。

「お休みなさい・・・ボニーお嬢様。」

ドォン

っと地響きに似た音が部屋の内部を震わせると同時に、
ボニーの心にもその音は破槌となり、胸を打つ。
そして廊下を歩くローもまた、偽りを固めた自らに怒りを覚え、
右拳を強く握りしめている。

一人切りの部屋で止める事の出来ない涙をぬぐい、
ベットの上に置かれた大好きな人形を抱え、そっと横たわる。

「なぁ・・・私どうしたらいいのかなぁ・・・ベポ・・・」

そう言いながら眺めた窓の景色は、
青空の先に黒く厚い雲が漂い始めており、
混じり合う空の模様を眺めながら、
ボニーは自らの心に蓋をし、少しだけ眠りにつく事にした。

 

−−−−−−−−−− 続く −−−−−−−−−−−

 

 

〜後書き的な何か〜
どうも亀です。
前回の更新から大分時間が立ちました・・・
どうもすいません(*- -)(*_ _)ペコリ

このマフィアパロ、手ブロで仲良くしていただいている。
裕作さんからの発想です。
他にもアーコさん こひまさん みさまさん
などの協力もあり、なんとか書いています。
ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

まぁひとまず前半の部分って感じです。
この後また少し長くなりますが、
完結までは書きますので、
読んで下さる方がいれば、拝ませていただきます。

ひとまず、ここまで読んで下さりありがとうございました♪

 

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