小さな木の実

紅乱   闘神から分かれた片割れの物の怪 男性
       闘う・喰う・寝るが好きで、言葉は理解できるが、
             無口で興味がない事には見向きもしない。
ノークィ 亜人種女性(植人族花も咲かせれる)
ローチェ 亜人種女性(獣人族犬科)

 

 

 

 

 


彼がいつからここに来たのか分からない
もうずっとずっと前の事だったと思う
覚えているのは、いつもどこか怪我をして帰ってくる
彼の姿だけだ

ふらっと出ていっては
ふらっと帰ってくる


怪我をして血も流して
涙も流して帰ってくるのに

 

いつも嬉々として"外"へ出て行く

 

「ふぅ……今日はこっちへ寄らないのかなぁ。」

木々が茂る中で彼女は自分に止まっている、
小鳥を撫でながら、
微かな溜息をついていた。
植人である自分は動ける範囲が限られている。
自分が何代目かは知らないが、ずっとこのテリトリーの草花を育て、
虫達への栄養を与え、たまにくる鳥達の宿り木となる木々を育てる。
幸せと思った事はないが、嫌だと思った事も無い。
ただ……時々退屈になるのが……苦痛だった。

「……はぁ……」

また溜息をついた時に木々がガサガサっと揺れ、
その音に鳥達が一斉に飛び立った。
彼が来たのかと期待を寄せ、振りかえると、
目の前には覆いかぶさる影だけが見えた。

「ノークィ♪なぁに溜息ついてんだよ!!」

その影は獣人である友達のローチェで、
いつものように人懐っこい笑顔で抱きついてきた。
力強い腕と足に生えた毛がとても触り心地が良く、
喜んだ時に振る尻尾が可愛らしかった。

「ちょ!ローチェ?……」

「なんだよあからさまに、ガッカリしやがって。」

はははと笑いならが、その力強い手で私の背中をパシンと
叩いてくるのもいつもの挨拶だったが…痛いのは苦手だ。

「まぁた紅乱ちゃんの事考えてたんでしょう?」

にやりと笑った口元から鋭く尖ったく八重歯が見える。

「そ・・・うよ、いいでしょう?」

へへっと笑い、ローチェは私の側を離れ、
近くにあった高さ1m程の岩へ向かうと、
それを軽々と持ち上げ私の側へそれを降ろし、
岩の上にどっかと座ってしまった。

「ちょっと、前に置かないでっていってるでしょ?」

「座るだけだって♪それに座ると、
 お前の花のせいでよく顔が見えないからな。」

私には普通に言われている"足"というものが無い。
人魚のそれが魚の形をしているように、
私の"足"の部分は植物で、腰の辺りから大きな花弁が生えている。
それでも、かがめる事くらいはできるのだが、
ローチェはいつも気を使って、邪魔になってる石をどかしてくれる。

   少しでも 私の世界が広がるように

「で?今度紅乱ちゃんが来たら何をしてあげるつもりだい?」

先程逃げて行った小鳥たちも、ようやく落ちついたのか、
少しずつ自分達の宿り木へ戻り、数匹が私達の周りを飛んでいた。

「何って……特にこれといってないけど……」

「特にって、あんたまだ気づいてないの?」

獣人特有の鋭い牙が良く見えるほどに、
ローチェはポカーンと大きく口を開いた。
そう言われても自分では何も変わってないと
思っているのだから仕方がない。
そういう感情が表にでたのか、
ローチェから視線を外すと、
彼女は私の胸元に指を這わした。

「きゃ、何するのよ。」

「ほれ、嗅いでみな。」

ずいっと差し出された指先には、
うっすらと黄色い滴が見える。
それが自分の身体から這わされてとったのだと思うと、
少しだけ恥ずかしかったが、ローチェの目が真剣だったので、
ゆっくりとその匂いを嗅いでみると……

   とても甘く良い匂いがした

「な?良い匂いだろう?ノークィはさ、
季節事にいい匂いしてるんだよ。」

子供をあやすようにローチェは、その大きな手で私の頭を撫で、
また明るい笑顔を見せてくれた。

   私の知らない私を いつも教えてくれる

気づけばどちらかともなく笑いだし、
飛び廻る小鳥達の数も増え、
小動物までその談笑に混ざろうという勢いでやってきた。
しかし、それは私達の声に引きつけられたのではなく、
私達よりも近しく頼れる存在が帰ってきたからだ。

木の緑や花の色とは対照的な色である黒の着物
長く伸びた黒髪が陽にあてられ艶やかになびき
金色の眼は、全てを押さえるように力強い

   紅乱さんが 帰ってきた

いつぶりか分からないけれど、
その変わりない姿に安堵し、目がしらが少し熱くなる。
ローチェは、座っていた岩をそっと持ちあげ、
少し離れた場所に降ろし腰を据えた。

少しずつ近づいてくる紅乱さんは良く見ると、所々怪我をしていた。
血の色も匂いもするはずなのに、
彼の存在がそれを掻き消しているようだった。
目線が合い、言いたい事が沢山あるのだけれど、
その雰囲気に飲まれ言葉が上手く出てこない。
縮まる目線の距離と聞こえてくる吐息の音が、
彼との距離の近さを感じ、
いつのまにか顔に触れられていた彼の手は暖かかった。

「お前……良い匂いがするな……」

耳元で囁かれた声に、身体が早鐘を打ちならしたように鼓動し、
全身から先程嗅いだ匂いが飛散されていることに気づいた。
待ってと言う前に彼は私の首筋に唇をあて、伝う滴を一つ舐め取る。

「ひゃ!」

驚きほどこうとするが、この場所から動けない私には
どうする事もできない。ローチェに助けてもらおうと、
彼女の方を見ると、岩の上にのったまま、
グッっと親指を立てて笑顔でこちらを見ていた。

   そう言う…意味じゃぁないのに……

滲みでてくる滴を抑えようとするが、彼が執拗に舌を這わせ、
滴を舐めとる度に身体が紅潮し止めようがない。

「なぁ……お前……食べても良いか?」

その一言に脇で見ているローチェは歓喜の声をあげていたが、
私はそれどころでは無い。
その問いに答えようにも声がでず、
抗おうにも幹に固定されているために、
上半身だけではどうしようもない。
半分は望んでいた事だが、残りの半分は違う

無言のまま擦り寄る紅乱の魅力に耐えながら、
手を自分の背中に回し、それを紅乱の前へ差し出した。

「食べるなら……コレを食べて下さい。」

いきなり出された手に当たる事なる紅乱は顔をすぐに引いていた。
そして、私の手の中にある物を凝視し、一つつまみあげた。

それは 小さな 紅い 木の実

そのまま紅乱は何も考えずにパクリと口に入れ
数度噛むとカリカリっと小気味のいい音が聞こえた。

「美味しいなこれ」

先程までの、険しい表情は消え失せ、
目はうつろになりそのまま私の花弁の上で寝てしまった。

「もったいないなぁノークィ、
あのまま食べられたらよかったのに。」

「物騒な事言わないで!
本当に食べられるのかと思ったんだから。」

楽しそうに顔をにやつかせるローチェ、しかし冗談ではなく、
紅乱さんの食べるという意味は「食事」を意味するのだから、
気をつけなければいけない、
っというのはこの森の常識になっている。

「はは、まぁ確かにそうだ。
どれアタシも紅乱ちゃんの為にゴハンとってこようかな♪」

そう言いながら座っていた岩を持ちあげ、
ばいばいっと手を振りながら森の中へと彼女は帰っていった。

気付くと既に陽が傾き始めており、
真っ青な空が徐々に燈色に染まっていく。

自分の花の上で寝る紅乱さん
この時が続かない事も分かってる
彼がまた外の世界で進んで歩いて行くのも分かる

この空の色がすぐに変わる様に

ほんの僅かな時間だけど

とても
     とても
         
             美しい

       大切な時間

 

鳥の囀りに目を覚ますと、目の前には自分の花の色が飛び込んでき
た。慌てて辺りを見渡すと、紅乱さんは凛と立ち、
その瞳は真っすぐ遠くを見つめている。

私にはわからないけど、
彼だけに感じる何かがその先にあるのだろう。
躊躇うことなくその視線の先へ歩き始めた。

「待って下さい紅乱さん!」

しかし、彼の歩みは止まらない、
こちらの声など聞こえていないようにずんずんと歩いて行く。

「食べ物を…お渡しします!」

届かなくてもいいと思った必死の叫びは、彼の耳に届き、
紅乱さんは、こちらへ踵を返してやってきた。

「食べ物って……どこだ?」


何よりも美しい金色の瞳
それを眺め続けていたいという欲求を抑えるために
下唇をきつく噛みしめ そっと目の前に差し出す

それは葉でくるんだ包

中には昨日紅乱さんにあげた

   小さい紅い木の実

  私の気持ちの一つ一つ

   伝えられない想いの
         
            数々

 

紅乱さんなら、そんな事も考えずに包み事食べてしまうと思っていたが、包をマジマジとみつめ、すっと自分の懐にしまった。


「ありがとう」


   微笑みにも足りない笑顔

      でも

   それだけで私には十分だ


目から溢れるモノを堪えつつ、
紅乱さんが外の方へ向かう後ろ姿を見送り、
その力強い背中に祈りを捧げる。

「どうか……ご無事で……」

 

 

紅乱さんの姿が見えなくなると、いつもの景色だけが残った。
生い茂る木々
それを宿り木とする鳥達
鮮やかに咲く花々
心地よい日差し

          退屈な時でしかなかった

「あれ?紅乱ちゃんもういちゃったの?」

自分の身の丈ほど大きな籠一杯に果物を詰めたローチェが、
残念そうな表情を浮かべ、
紅乱さんが歩いていった所からやってきた。

          不便な身体を呪いもした

「そうよ、遅かったわね。」

              でも

「ん?そうか……」

じぃぃっとこちらを見続けるローチェ

          今はそんな事はどうでもいい

「何よ?なんかおかしい?」

          大切な思い出ができたから

「いや、ノークィ……あんたさ」

すぅっと一陣の風が吹き
色とりどりの花びらが宙を舞う

「いい笑顔してるよ。」

 

 

 

〜あとがき的な物〜

 

お世話になってるコウさんに捧ぐ

 

勝手に妄想乙って感じですねw
コウさんが描かれた亜人二人?が可愛くてもう……
ちょっと二人の事を書きながら
コウさんの紅乱とのイロコイを書きたかったけど……
この自由な紅乱を書くのがここまで難しいとはw

もう少し絡みを入れたかったけど
イロコイに無関心な紅乱は
どうやっても惚れないなぁって結論で
こんなお話となりました♪

中々妄想してて楽しかったです♪
特に亜人種は色々と使える事が判明wwwww

次に生かせればと思ってます♪


それでは最後まで読んでいただきありがとうございました
(*- -)(*_ _)ペコリ

inserted by FC2 system